勤務医に対する働き方改革の開始に備え、B水準、C水準の認定を受けるための勤務環境評価センターの評価を労務サーベイヤーとして担当、上半期で3病院の評価を実施。
2024年4月から勤務に対する働き方改革関連法の適用が開始されます。その際に医療機関として以下の認定を受けることで労働時間の延長が認められ、最長では年間時間外労働が1860時間まで可能となります。
B水準:地域の医療体制確保するため
C水準:技能の習得・向上を集中的に行わせるため
認定基準に従い、評価は88項目に渡り、その達成度合いで評価されます。
認定基準は、就業規則等書類の確認の他、実際の時間管理方法や労働時間削減に向けた計画や活動、具体的な対応として、タスクシェア・タスクシフト、勤務間インターバルの導入、副業の管理等、多岐に渡ります。評価した医療機関では、厚生労働省ガイドラインに示された基準にはなかなか達せず、数回にわたり資料の提出をお願いするのが実情です。
実際の評価を担当して重要と感じることは、医療機関として担当者任せにせず、病院トップが労働時間短縮目標を明確にし、計画に沿って全員で取り組むことだと思います。
また、病院トップは当然として、管理職の医師、現場の医師、事務責任者等皆さんの労務管理に関する理解が必要と思います。
2024年4月までに認定を受ける必要がありますので、病院側も評価する側も急ぐ必要があります。
36協定の締結、就業規則の改訂等、従業員代表の役割が、益々重要になっている。この機会に遵法、かつ、適切に従業員代表を選出したいので考え方、方法等を指導して欲しい。
労働基準法では、36協定等の労使協定締結や就業規則の制定・改訂時などに「事業場の過半数で組織する労働組合、或は、(労働組合が無い場合)労働者の過半数を代表する者」と書面による協定締結や意見徴収が定められています。
現状、日本の多くの中小企業では労働組合が無いのが実情ですので「従業員の過半数を代表する者(従業員代表)」の選出が必要となります。
働き方改革の推進や職場環境の改善等で従業員代表の役割は今後益々高まっていくと思われますが、誰にしようか?適任がいない?嫌がられて成り手がいない、とお悩みの場合も多いのではないかと思います。
選出時には法的にクリアすれば良いということだけではなく、折角に機会ですのでこの機会にもっと前向きに、従業員代表が会社の人事労務を良くするための重要人物であると再認識頂き、人材育成の好機ととらえ選出することが重要と思います。
従業員代表の法的要件は、
①事業場の全労働者(含むパート・アルバイト、管理職、休職者)の過半数の信任を得ていること
②選出時に民主的な手続き(選挙、信任投票、挙手、話し合い等)が取られていること
=(使用者の意向により選出された者でないこと)
③管理監督者でないこと
例えば、社内の親睦会団体の代表を自動的に従業員代表とすることは、選出方法としては上記から違法と判断される可能性が有ります。
一番の理想は、社内で公募、社内から立候補者が出て、複数の場合は選挙、単独であれば信任投票が行われて決定することです。
立候補等がない場合は、会社側が適任者を説得することがありえると思いますが、その場合でも全従業員の過半数の信任を得る手続きが必要となります。
その他の注意点や配慮すべきこととしては、以下が重要と思います。
・従業員代表の役割と任期を明確にすること
従業員代表として担う役割は多く、今後も増加傾向に有ります。
必要な都度毎に選出すると大変ですので、任期(1年程度)を定めて、その間の必要事項に
対応頂く方が良いと思います。その場合、予定される必要事項(役割や協定の種類等)を
明確にすることが必要です。
また、ほとんどの企業で成り手が多数いることは難しいでしょうから、再任可能としてお
いた方が良いと思います。
・従業員代表になることで不利益を被ることがないように注意すること
従業員代表が、会社の意向とは異なる意見を主張することがあると思いますが、その場合
でも意見を真摯に受け、排除や不利益を与えるようなことが無いよう配慮が必要です。
もし、不利益が有れば、場合によっては不当労働行為と認定される可能性も有りますので
注意が必要です。
むしろ、評価や今後の昇格で有利に配慮しても良いと思います。
メリットが無ければ、従業員代表を引き受けてくれる方はなかなか居ないと思います。
・従業員代表の活動に配慮すること
活動の時間とか、事務作業への配慮の他、組織的にもフォローすることを考えるべきと思
います。
先に社内親睦団体の代表が自動的に従業員代表になることは適当ではないと記載しました
が、信任された従業員代表が親睦団体の代表を兼務することは問題無いと思います。
そうなると親睦団体には他にも役員等職場代表等も参加するでしょうから、親睦団体の役員
メンバーが代表を支える、更には役員メンバーの中から次の従業員代表が育っていく環境が
整えられると良いと思います。
・定期的な協議会を開催する
従業員代表とは定期的に会社の重要事項を共有すると良いと思います。
そうすることで会社への信頼や理解が深まり、やり取りがスムーズになると思います。
その機会として定期的に他の役員も含めた協議会等を設定すると良いのではないかと思い
ます。
令和5年の4月からの時間外労働月60時間超割増率50%に備えて代替休暇を取得できるようにしたいので、具体的な導入方法を指導して欲しい。
令和5年4月から中小企業に対しても月60時間超の時間外労働の割増率50%以上が適用されます。
代替休暇制度とは、月60時間を超える時間外労働時間について50%増の割増賃金を支払う代わりに換算率で計算した代替の有給休暇を与える制度です。
但し、代替休暇を付与しても通常の25%増の割増賃金は支払う必要があります。
割増率が50%増から25%増に引き下げられることができるため大幅な労務費の削減と思われたのかもしれませんが、60時間超の時間数に換算率(50%-25%)を掛けた時間分の有給休暇を別に付与し、その取得が必須ですので、全体の労務費換算では削減にはならないと説明しました。
例)月80時間の時間外労働の場合
通常の計算では、60時間は25%増、20時間(80時間-60時間)は50%増
代替休暇制度とする場合は、
80時間全て25%増と加えて5時間の代替有給休暇{20時間(80時間-60時間)×換算率(50%-25%)}
となります。
それでも突発的な残業発生には残業代の抑制効果はありますし、社員の健康管理面でも有効と思いますので、代替休暇を取得出来る様に準備した方が良いと考えました。
具体的には以下の手順となります。
① 就業規則(賃金規定)を改訂する。
就業規則(賃金規定)に時間外労働に対する割増率が60時間以下の部分は25%増、60時間超は50%増であることを記載する。
② 就業規則(賃金規定)に代替休暇についての項目を追加する。
上記①の改訂に加え、代替休暇を取得することができることを就業規則で明確にしておくことが必要です。
③ 労使協定を締結する。
代替休暇を取得できるようにするためには労使協定の締結が必要です。(届出不要)
必要な内容としては、以下となります。
ⅰ.対象労働者と期間
ⅱ.付与単位(1日または半日)
ⅲ.計算方法
ⅳ.端数の処理
ⅴ.取得の意向確認
ⅵ.賃金の支払日と清算時期
50%増は令和5年4月からですので、代替休暇制度の導入もそれまでに準備すれば良いのですが、それまでに重要なのは、労働生産性向上による残業時間削減の推進です。変形労働時間制の導入や強化、フレックスタイム制、勤務間インターバル制度等の導入等の人事施策の実施も有効と思います。
2024年事労務からの医師の働き方改革の取組みに向け、全国の選抜された医療機関で模擬審査を行い、医療機関の現状や評価制度自体の課題等を検証する。
2024年から医療機関は、部門ごとに都道府県から一般水準A、或は、地域医療確保特例水準B、集中的技能向上水準Cの指定を受けることとなり、指定された水準別に時間外と休日労働時間数の上限が定められます。
A:年960時間/月100時間未満(休日労働含む)
B:年1,860時間/月100時間未満(例外有り、休日労働含む)
C:年1,860時間/月100時間未満(例外有り、休日労働含む) となる予定です。
B、C水準の指定を継続的に受けるためには、労務管理状況の他、労働時間短縮に向けた活動を継続的に推進しているか等について評価センターによる評価を定期的に受ける必要があります。
この評価センターが行う評価を日本医師会の医師と全国社会保険労務士会所属の社会保険労務士の労務サーベイヤーが共同で行うこととなる予定です。
今回は、この評価制度の評価内容等を検証するため、石川県からも2医療機関が指定を受け模擬審査が実施され、私が労務サーベイヤーとして模擬審査を担当しました。
事前に就業規則や36協定等の資料を提出してもらい確認、評価内容は労務コンプライアンスから労働時間短縮に向けた取組み内容の他、面接指導、副業、健康管理体制の確認、タスクシェア・シフトの状況、地域医療への取組み等多岐に渡り行われました。
人事労務のコンプライアンスを強化し企業の信頼度と「人を大切にする企業」を推進するため、
社労士認証制度による経営労務監査を受けたい。
「法改正や行政当局とのやり取りの中コンプライアンスは維持していると考えているが、総合的にコンプライアンスに対しての状況や課題等を把握し、更に人を大切にする企業として向上していきたい」とのご相談が有りました。このご要望にたいしては、社労士診断認証制度による経営労務診断を受診し、認証制度を得ることが良いと考え、推進して行くこととなりました。
「職場環境改善宣言」からスタートし、労務コンプライアンス(6項目14分類)、働き方の多様化対応(5項目6分類)に対して、チェックシート(51項目)で現状の確認作業を行いました。
女性活躍推進での遅れという課題もありましたが、当該企業は意識も高く、法令等を遵守し働き方改革による職場環境の改善を進める「経営労務診断適合企業」の認証を得ることができました。
働き方改革推進事業を活用して、現行の就業規則をチェックしてコンプライアンス上の問題点や課題等を指摘して欲しい。
当該者の社長は、新聞での働き方改革推進事業の案内を見て、現行の就業規則の問題点が気になり、以前セミナーで面識が有った私に相談がありました。
働き方改革推進事業の活用であったため、回数や期限の制限はあるものの、当該社には費用負担は無く、就業規則のチェックを行えるとても良い機会であったと思います。
就業規則全般に加え、評価制度等給与制度についても意見交換でき有効な機会であったと思います。
就業規則を長年改定しておらず、現行のものがコンプライアンス上適当なのかが分からないので、改定案を指導して欲しい。また、働き方改革に対応した内容も考慮して欲しい。
まず、現行の就業規則には、コンプライアンス上もまた労務管理上も見直した方が良いと思われる点が散見されましたので、現行規則に対する比較表を作成し、条項に従い順番に内容を確認していきました。説明の際は法的な内容だけでなく、当該者の状況に配慮しながら議論を進めました。
他社事例や労務管理上の課題も含め丁寧に説明させて頂き、当該社には納得がいくものが出来上がったと思います。
作成後は、従業員代表への説明、労働基準監督署への届出の他、周知方法についても指導させて頂きました。
その間、安全衛生等の課題のご相談もあり、引き続き人事、労務、総務全般について全面的にサポートさせて頂いております。
働き方改革関連法に対応した36協定を作成して運用したい。
新書式で実態に合わせた36協定書を作成し、労使間で締結後に労働基準監督署に届け出ました。
合わせて1年単位の変形労働時間制導入を支援し(就業規則の改訂、労使協定の作成)、業務効率化による残業削減を実現することができました。
労働基準監督署の立ち入り調査を受け、以下の是正勧告を受けた。対応方法が分からないので支援して欲しい。
是正勧告:36協定違反、労働時間の適正な把握、定期健康診断への対応 等
指導:有給休暇の5日取得義務、有機溶剤管理、休憩時間の取扱い 等
是正勧告、指導書の内容の確認から順番に処理を進め、期限までに全ての内容に対し労働基準監督署の担当者の了解を得ることができました。
当該企業にとっては初めての立ち入り調査であったため、当初は動揺も感じられました。しかしながら、多くの企業が同様の調査を受けており、是正勧告があっても期限内に適切に対処すれば問題ないことを説明し、冷静に対処を進めることができたと思います。
是正内容については引き続き確認する必要がありますので、以降も定期的にサポートさせて頂いております。